第9章 月夜の宴
真っ暗闇の屋敷の中
華々しい音楽と共に光が灯される
会場に向かう途中
屋敷の玄関には多くのリムジンが並んでいた
中から出てくる人は、派手なドレスを着込んだセレブばかり....
場違いなように思える雰囲気に私は緊張しているのが分かった
一方で、横を並ぶシュウや皆はその場に馴染んでいて、通りすがる人達は彼等に気づくと途端に膝を曲げ、お辞儀をする
「おい、なに萎縮してんの」
隣に立つシュウが呆れたように私を見る
「だって....」
これは、彼らの父....カールハインツ主催の夜会であり、次期当主であるシュウのお披露目会でもある
そのため、先程から隣の彼は痛いほど視線が向けられていた
しかし、彼はその事を全く気にとめてないようだ
前を行くレイジさん達が会場の扉を通り抜ける中、私は思わず扉の前で立ち止まってしまう
ダンスも作法も人に見せれるくらいには上達した
それに、シュウとの距離にも大分慣れてきた
だけど....私は....
『ルカ』
ふいに名前を呼ばれ、顔を上げる
すると、少し前に立つシュウと目が合った
「....前にも言ったけど、そんなに堅くならなくていい
それに、人間はこんな機会めったにないんだろ?」
私は頷く
「なら....」
シュウの綺麗な手が差し伸べられる
『夢みたいな景色、見せてやるよ』
「っ///」
シュウの優しく、余裕な微笑みに私は胸が締め付けられた
(まさか....シュウは最初から....)
それと同時に、彼の言葉に自惚れた事を考えてしまった
"偽りの婚約者"
けれど、彼のその表情に偽りはない
不思議と先程までの緊張はすっかり無くなっていた
深く呼吸をし
ルカはシュウの手に自分の手を重ねた