第9章 月夜の宴
時間はあっという間に過ぎ、空には大きな満月が浮かんでいる
夜会はこの屋敷の別館で行われるそうで、レイジさんは朝からとても忙しそうだった
一方、私は部屋で数人のメイドさんによって着替えや化粧などを手伝ってもらっていた
全てが済み、部屋からは誰も居なくなる
私は鏡に映る自分に驚いた
「....私じゃないみたい....」
纏め上げられた髪に大人びたメイク
普段からここまで粧し込む事のない私は見慣れない姿の自分に違和感をおぼえた
そして、極めつけはこのドレスだ
昨日、私は結局ドレスも選ばずに気を失ってしまったのだが、メイドさんによるとシュウが選んでくれたらしい
「綺麗なドレス....」
ピンクを基調として、ナチュラルな型で上品さを残し、薔薇をモチーフとしたレースで可愛らしさを醸し出していた
きっと、もう二度と着ることはないだろうと思いながら私は嬉しさを隠せないでいた
『やっぱり、俺の予想通りだな』
「!」
突然背後から聴こえる声にまたも肩をびくつかせる
振り返るとそこには正装に着替えたシュウが居た
「っ....」
急に現れるなと文句を言おうと思ったが、口から言葉が出なかった
いつも無造作に流している髪は整えられ、黒いスーツは彼にとても似合っていた
普段よりも益々背が高く見えて、私は見上げる形になる
「なにみとれてんの?」
「!////」
顔を覗きこまれ、顔を赤くする
「このドレス....」
シュウの目にルカのドレス姿がうつる
「あ、昨日はごめんなさい....
これ、シュウが選んでくれたんだよね?」
意識を失ったのは他でもないシュウのせいなのだが、私は一応頭を下げる
「まぁな
あんたの貧相な体に合うか心配だったけど....」
ちゅっ
シュウはルカの手の甲にキスを落とす
そして、シュウは満足そうに微笑んだ
「悪くない」
「っ////」
あまりにさり気ない動作で私の頭は追いついていかない
でも、純粋に嬉しかった
シュウの一言で私の心は満たされた気持ちになる
「し、シュウも....」
「?」
ルカは俯きがちに、口を開く
「すごく、似合ってるよ」
「!」
そっと顔を上げて見たシュウは、驚いていて少し照れたような表情をしていた