第10章 逆巻という名
私はシュウに言われた通り、レイジさん達を探そうと辺りを見渡す
(それにしても...シュウ大丈夫かな...?)
カールハインツさんを前にしたシュウの表情はいつもと違って、とても強ばっているように見えた
不思議だけれど、あんな顔の彼を見たら、何だか彼のことをもっと知りたいと思ってしまう
少しでも、力になれたら...
思えば長い間、一緒に居るけれど
私達はお互いの事を何も知らない...ーーー
『ちょっと、あなた』
「!」
ぼっとしていると、目の前の人に声をかけられた
聞き覚えのある声に顔を上げると、そこに居たのは腕を組んだリカさんだった
「大丈夫?なんだか、考え込んでるみたいだったけど」
私は何も言えず、苦笑いを浮かべる事しか出来なかった
そんな私を見かねたリカさんは、あまり人目につかないバルコニーへ案内してくれた
最初の印象とは違って、優しく気の利いた彼女に私は少し動揺した
「それで、どうしたの?」
私はふとリカさんがシュウと幼なじみな事を思い出し、彼女なら教えてくれるかもしれないと思う
「あの...私、シュウの事を何も知らなくて...
昔、シュウは人と何かあったんですか?」
その問いにリカさんは、戸惑ったような顔をして、軽くため息をついた
「ごめんなさいね、私があんな事言ったから...」
綺麗な瞳が、落ち込むように下を向く
「いえ、リカさんに会う前からシュウは時々、何かに苦しんでるみたいに魘されていて...」
ルカは前に強く掴まれた腕を無意識に触る
「...変わってないのね」
「えっ...?」
静かに呟かれた言葉
「まぁ、大体分かるわ。彼は自分の事を簡単に喋る方じゃないから」
呆れたように顔をしかめながら、リカさんは私の瞳を捕らえる
「教えてあげる、シュウのこと
私もさっきは失礼な事しちゃったし、それに...」
リカさんの整った顔が美しく微笑む
「貴方は、他の人間とは違う...そんな気がするから」
意味深な言葉を呟き
どこか懐かしむように遠くを見ながら、淡々と話を続けた