第9章 月夜の宴
結局、昨日の夜はあのまま気を失ってしまった
私が起きてみるといつもの逆巻の部屋に戻っていて、あの地下部屋と出来事は夢だったのではないかとさえ思った
しかし、首に残る牙の跡を見てそうではない事が分かる
「....シュウは....」
隣を見てもベッドにシュウの姿は無かった
彼が居なくて寂しい
そんな気持ちを抱く自分に思わず笑ってしまった
意識の遠のく直前に言われた言葉を思いだす
ひどく優しい言葉....
私は勘違いしてはいけないと心に言い聞かせる
保健室に運んでくれた時も彼は私に対し優しく接してくれた
けれど、それも全て私を利用する為....
分かってる....分かってるはずなのに....
「このままじゃ....私....ッ」
ーーーーズキッ
胸に痛みを覚え、私は急いで引き出しを開け、薬を取り出す
瓶の中身はもう少しで無くなりそうだ
薬を飲み込むと、心臓の動きが落ち着いていくのが分かる
今日は夜会当日
私はシュウの"偽"婚約者....
そう....それ以上でも、以下でもないーーーー