第8章 晩餐会
体が後ろに倒れ、見上げるとシュウと目が合う
全く状況が掴めない
「し、シュウ....」
いつもみたいな冗談めいた顔では無く、今日の彼は思いつめたような表情をしていた
「....どうせ、お前もすぐに....」
ポツポツと言葉を発する
彼の瞳は虚ろで、何だかいつもと違う....
「きゃっ!!」
シュウの手が私の脚をなぞる
私は驚きと羞恥で、ベッドから降りようとする
「逃げるな」
しかし、シュウの力に適うはずもなくそのまま、腕を押さえつけられてしまった
彼は非力な腕を強く掴んで離さない
「....分かってたはずなのにな....」
シュウは今まで見たことないほど悲しげな顔をする
明らかに、あのドレスを見て彼の様子が変わった
....どうして、そんな顔をするの....
『シュウは君が思う以上に壊れてる』
ライトくんの言葉が頭をよぎる
「っ....」
過去に何があったのか....私には何も分からない
無理矢理、魔界に連れ去られて....
突然、血を吸われて....
偽の婚約者になれだなんて、無茶にも程がある
だけど、何故かこの蒼い瞳から目を逸らすことは出来ない
ーーーぎゅっ....
「っ!!」
ルカは、シュウを落ち着かせるように優しく抱きしめた
抱きしめた彼の体は少し震えていた
「....大丈夫だよ、シュウ」
シュウは、ハッと目を見開く
「お前....」
力を弱め体を離す
シュウの顔を見ると彼は驚いたように私を見ていた
そして軽くため息をついて、起き上がる
「....シュウ、大丈夫...?」
彼は少し頭を抱えると、私を見て微笑を浮かべる
「あんたが初めてだ」
「えっ....」
シュウは自分の手をじっと見る
「ここの地下部屋は、ヴァンパイアにとって良くない環境に有る」
良くない環境....?
「あんたには分からないだろうが、ここには異常な程、血の匂いが充満してるんだ
だから、ヴァンパイアは力に歯止めが効かなくなる....いや理性がなくなるの方がいいか」
ルカは自分の手首を抑え、先程のことを思い出す
「特に、俺はそうゆう影響を受けやすい....」
シュウは私の方を見て、不思議そうな顔をする
「だから、お前が初めてだ
俺の理性を取り戻す女なんて」