第6章 未知
「シュウさん....」
アヤトの後ろに姿を現したのは
少し殺気立ったシュウだった
「あぁ?シュウじゃねーか
丁度いい、今からコイツの血を味見する所だったんだ
別にいいよな?」
「........」
「ッ....」
シュウさんと目が合う
彼は私の顔を見ると呆れたように溜息をついた
「あぁ。別にいいけど」
ーーーズキッ....
そんな....
彼の言葉を聞いてアヤトくんは口角を少し上げる
ルカの顔が益々青ざめていく....
すると
『ただ、あの女の血を俺にも飲ませろよ』
シュウさんは付け足すように言葉を繋げる
あの女...?
その言葉を聞くとアヤトくんは怒ったように歯を噛み締める
ドンッ!!
「痛っ!!」
アヤトはルカを押し飛ばす
「おい。シュウ。ふざけんな
レミは誰にも渡さねぇよ!」
レミと呼ばれる女の人を出すと、アヤトは今にも殴りかかりそうなくらい憎悪を剥き出しにした
アヤトはそのまま何処かへ行ってしまった
「....あんだけ執着してたら当たり前....か」
私は何もかも分からないまま、そこへ座りこんでいると、シュウさんがこちらに歩いてくる
彼はしゃがんで私の顔をのぞき込む
至近距離で目が合って私は頬が赤くなるのが分かった
「ひどい顔」
「ッ....」
「....泣くほど怖かった?」
「....はいッ」
私の言葉を聞くと、どこか彼は満足そうに笑った
「あんたは恐怖と快楽に疎いと思ってたけど、ちゃんと人間らしくて安心した」
「....あのシュウさん」
「シュウでいい
その堅苦しい敬語もやめろ
あんた....仮にも婚約者の自覚あるのか?」
少し、戸惑いながらも彼の言うとおりにする
「し、シュウ....
助けてくれてありがとう」
シュウの目が一瞬揺らぐ
だが....
「....はっ....別に助けたつもりは無い
あんたはただの偽婚約者だ、自惚れるな」
ひどく冷たく彼は言い放った
「大体、ほんとに感謝とかしてんだったら、言葉じゃなくて....」
彼が耳元で囁く
『血を差し出せよ』
「ッ....」
「あんたの恐怖に怯える顔....俺にも見せなよ」
ーーーーカプッ
彼の牙が首筋に刺さる
全てを吸い取ろうとするように、深く、永く、血を貪った