第6章 未知
声をかけられ振り返ると、そこには綺麗な赤い髪をした男が居て、こちらを睨んでいた
私は少し身を縮こませる
「んだお前、誰だ?」
彼は私に歩み寄る
この態度からして彼はシュウさんの弟なのだろうか....
「え、えっと....立花ルカです」
「ふぅーん....で、誰の女だ?」
当たり前のように放たれた質問に私は少し動揺した
「わ、私は....その....シュウさんの....」
「あぁ?シュウ?」
彼はその名を聞いて「へぇー」と納得したように頷く
「まーたあいつは新しい奴連れてきたのかよ
くっ、長男様は大変だな」
どこか馬鹿にしたように呟く
ドンッ!!
「っ!」
彼は私の顔の横に腕を置き、逃がさないようにする
「俺様は逆巻アヤト
なぁ、お前....人間だろ?」
「ビクッ!!」
アヤトはルカの首筋に手を当てる
言葉を交わす彼の口元には白い牙が見えた
そうだ....ここはヴァンパイアの館....
私は怖くなって、足がすくみ声も出ない
「けど、珍しいな。面倒くさがりなシュウが人間を連れてくるなんて」
どうゆうことだろうか....
アヤトは不敵に微笑む
「ってことはお前の血は相当極上なのか....くくっ、俺が味見してやるよ」
彼の牙が首筋に近づく
私は必死に彼の胸を押し返した
「や、やめてください!!」
しかし、抵抗も虚しく腕を素早く掴まれる
「うぜぇ....お前は黙って俺様に血を吸われてりゃいいんだよ」
「ッ....」
何故だろう
シュウさんに吸われた時はこれ程までには恐怖を抱かなかったのに
アヤトくんに吸われると思うと、死にそうなくらい恐れが巻き上がってくる
それと同じ様に彼女の目からは涙が零れ出す
(こわい....ッ....)
ルカが強く目を閉じた、その時
『あんたら、何やってんの?』
「ッ....」
今度聞こえた声は、不思議と安心する彼のものだった