第5章 ヴァンパイア
ーーーーっ!!
私の首を裂くようにして入り込んでくる牙
「ッ....ゴクッ....ンッ....」
耳には私の血で喉を潤す彼の色っぽい声しか入ってこない
"こわい"
私が初めての吸血で受けた真意は恐怖だった
これじゃあ、ほんとに私は彼の餌だ
「んっ....?
ははっ....あんた凄い顔
そんなに痛かったか?」
「........」
私は静かに頷く
一方、怯える私を見て彼はどこか楽しげだ
「....あんたの血、不味くはないけど何か物足りない」
彼は私の首から目を離し、私の目を見る
やはり血にも味が有るのだろうか....
彼は少し微笑んで「なるほどな」と呟いた
「?」
1人納得する彼....
私にはもちろんさっぱりだった
「まぁ、いい。直に変わってくるだろ」
そう言うと彼は私の上から退いた
私はホッと息を吐くが、首筋の痛みと、少しの貧血で身動きが取れない
「そんなんじゃ、この先もたないぞ?」
彼は嘲るように笑う
この先ってことは....また吸われるのだろうか....
私がそんな一抹の不安を抱いていると、彼は起き上がり思い出したようにこちらを向く
「あぁ、そうだ
本題をわすれてた」
横になったままの私の額に手を置く
私が何を言われるか身をこわばらせていると
彼の口からは驚くべき言葉が告げられた
『あんたには、今日から俺の婚約者になってもらう』
頭上の彼が私を嘲笑う
あぁもう、逃げられないーーーーー