第5章 ヴァンパイア
「魔族...?」
彼の口から出た言葉は信じられないような内容だった
私達人間が暮らしている世界の他にもう一つ
"魔界"と呼ばれる世界が存在しており、
今私はその魔界に居るらしい
到底信じられる話でも無く、私は唖然とする他なかった
「じゃあ....シュウさんは人間じゃないんですか....?」
そう尋ねる私に彼は驚きながらも苦笑した
「なんだ、思ったより冷静なんだな
あぁ。俺は人間じゃない」
突然、彼の瞳が鋭くなる
そして、口元には
今まで隠していたように暴かれる牙のようなモノが見える
彼の指が私の首筋をゆっくりとなぞる
「俺は...
"ヴァンパイア"」
そう告げた彼の瞳は私の首に流れる血流をうつしていた
ヴァンパイア
それは、人の生き血を吸う魔物
相手を自身の美貌で惑わし、快楽と引き換えに血も心も手に入れる
これが...彼の本当の姿
けれど私はひどく驚かなかった
むしろ...
『...やっぱり...』
「!」
私は無意識に出た言葉にハッとする
「お前...」
心のどこかで私が感じていた違和感....
みんなが当たり前に受け入れていた彼らは
私から見たら、とても異質な人達だった
人間とは思えない
あながち私の予感は当たっていた
大して驚かない彼女を見てシュウはどこか困ったような顔をする
「ははっ...初めてだ
あんたみたいな人間見るの
お前達人間は、知らなかったり有り得ない事に酷く恐怖を覚えると思ってた
でも...あんたは違う
なんで、驚かない?」
「...これでも、凄く驚いてます
私を助けてくれて、同じあの学校にいた貴方がヴァンパイアなんて...
私をどうするつもりですか...」
普通なら有り得ない話だが、それよりもそのヴァンパイアが何故私なんかをここに連れてきたのか
そちらの方が私は気になった
「....言っただろ?
夢を見せてやるって」
ちゅっ
「っ!!////」
そう言うと同時に彼は私の首筋にキスをする
そして、彼の口から牙がもれる
「や、やめてください!」
私は抵抗するが力及ばず、どうする事も出来ない
彼の牙が首筋に当たる
私は思わず目を瞑った
「お前は、どんな味がするんだろうな」
その言葉と共にルカの細い首にはシュウの牙が打ち込まれた