第5章 ヴァンパイア
「こ、婚約者!?」
私はその言葉に驚くと共に顔が赤くなる
彼は何を言っているのだろうか
動揺する私を見てシュウは心底怠そうにため息をつく
「....俺の親父のことは知ってるだろ?」
「....逆巻透吾ですよね?政治家の」
そうか、彼がヴァンパイアだというなら勿論父親だって....
「あぁ。
あいつはこの魔界を支配してる1人で
ヴァンパイアの王だ」
「!」
まさか、あの有名な政治家がヴァンパイアの王....?
彼によると人間界に住み着くヴァンパイアは少なくないそうで、あの嶺帝学院にも何人か居るらしい
「それで、今度親父が宴を開く
内容はまぁ、親睦会みたいなものだけど
その宴は、お節介な親父が俺の将来結婚する相手との見合いの場でもある」
「お見合い....?」
まだ若いのにもうそんな事も考えないといけないのか....
「でも、それでなんで私が....婚約者に?」
言いなれない言葉に羞恥を抱きながら尋ねる
「はぁ....正直、俺も嫌気がさしてる
毎度毎度、どうでもいい相手と顔を合わせるのは、もううんざりだ
だから、あの五月蝿い親父も想う奴が出来たって連れてったら、そんなお節介もやかなくなるだろ
まぁ、って言ってもそれも数日だけでいいけど」
それじゃあ、みんなを騙すことになるんじゃないか
私は首を横に振る
「わ、私そんな事出来ません!
それに....どうして私なんですか....?」
相手は全員ヴァンパイアだ
人間で何も知らない私が彼等を騙すことなんて出来るはずない
しかし、私の言葉を聞いて、彼は鋭く私を睨んだ
「あんたの意見なんてどうでもいい。
なんであんたを選んだかっていったら、丁度恩を売って、利用しやすいって思ったから
俺があんだけ、世話してやったんだ
お前は俺の言う通りにしろ」
いつもより口調のきつい彼に私は虚しさを覚えた
そうだ、全ては私を使う為....
私を看病してくれたのも、手を握ってくれたのもただの伏線....
勘違いしてはいけない
この数日間彼の言う通りに動き、終わったら元の場所に帰してもらおう
こうして、彼との偽婚約者生活が始まった