第3章 雨音
「........ッ....」
私は公園に入り、彼の前まで来た
しかし、彼は相変わらず目を閉じたままで
私に気づきもしない
耳にしたイヤホンで完全に外の音を遮断しているのだろう
綺麗な橙色の髪が雨で濡れている
長い睫毛には水滴も付いていた
このままでは風邪をひくと思って私は勇気を出して声をかける
「あの....ッ....」
少しの間のあと、彼は眉間に皺を寄せ静かに目を開ける
彼は顔を見上げる
「ん....なんだ、またあんたか....
....何の用?」
彼はまたいつもの調子で私に尋ねる
「....傘もささないで....何してるんですか」
「はぁ....見てわかんない?
音楽聴きながら気持ちよく眠ってた
ただ、どっかの誰かさんのせいでそれも台無しだけどな」
彼はため息をつきながら、呆れたように私を見る
呆れてるのは私のほうだ
「てか、あんたこそ何でこんな所に居るんだよ。
....まさか、ストーカーか?」
「っ!?///」
彼の言葉に顔が赤くなる
「くくっ....顔、凄い赤いんだけど....図星だったとか?」
私は顔をふり、少し声が大きくなる
「違いますッ!//
ここは私の帰り道で、たまたま見かけたから....その....」
その後の言葉は声に出なかった
本当は自分でも分からない
何故、私は彼に声を掛けたのだろう
もし、他の人がこうしていたら私は今ここに居るのだろうか....
頭の中で気持ちが錯乱する
そんな私を見て、彼はまたため息をついた
「....別に俺がどうしてようが、俺の勝手だろ。
あんた自分が図々しいことしてるって分かってる?」
ーーーーズキッ....
彼の言葉が胸に刺さる
私の足は一瞬外を向くが、これではだめだと頭ではちゃんと分かっていた
....確かに彼からしたらお節介かもしれないけど、このままにしておけない
「はやく、家に帰って下さい。
....じゃないと風邪を引きます」
私はぎゅっと傘を握って言葉を繋ぐ
「はぁ....あんた、話聞いてたのか?
てか、何様のつもりだよ....」
彼は私の言葉も聞かずそのまま目を閉じてしまった