第2章 眠り王子
ーーーーーガラッ
「あれっ....」
保健室の扉を開けると、そこに保険医は居らず
1つベッドのカーテンが閉まっているだけだった
待っていれば戻るだろうか....と思ったが、足の怪我の治療だけなので自分でも出来ると思って私は引き出しを開ける
消毒液とガーゼを取り出し、少しずつ足を拭いていく
「痛っ....」
よく見ると傷は結構深く、血もなかなか止まらない
人の事を悪く思ったバツなのかな
などと思いながら私は消毒液を付けたそうと瓶に手を伸ばす
「あっ」
ーーーコロンコロンッ
手から瓶が転げ落ち、ベッドの方へ転がっていく
私は急いでその瓶を捕まえようとする
だがその瓶は誰かの足に当たって動きを止めた
はっとして足元の瓶から顔を上げる
「!」
私はその人物の正体を見て愕然とする
「........」
蒼い瞳....
目の前に立っていたのは昨日階段で出会った男子生徒だった
薄橙色の髪に少し寝癖がついている
先程までそのベッドで寝ていたのは彼なのだろう
私が固まっていると、その人は足元の瓶に手を伸ばす
私は何か言わなければと思い、少し彼から目線を逸らす
「あ、あのっ....寝てる邪魔してすみません」
今言える言葉はこれが精一杯だった
彼は消毒液を持ち上げて私の方を見る
綺麗な蒼い目が私の足元を写す
「血.... 」
彼はそう一言呟いて、私に歩み寄る
「ッ....」
私は彼の変な威圧感に動けなくなる
妙な沈黙の中、口を開いたのは彼だった
「あんた....昨日の女だよな?」
私はそう言われ
あの階段でのことを思い出す
「は、はい....」
私がおずおずと返事をすると、彼はふっと笑った
私は彼の低めの声に身震いがした
無駄に心臓が脈打つ
「馬鹿な女。....俺にキスでもしようとしたわけ?」
彼は耳元で囁く
その言葉に私は必死に首を横にふった
自分でも忽ち顔が赤くなるのが分かる
私は下を向いて彼の顔を見ないようにする
そうでもしなければ羞恥で死んでしまいそうだった
「くくっ....まぁどうでもいいか
どうせ....すぐーーー
何か彼がぼそっと呟いたがその言葉は私の耳にまでは届かなかった
ただ、妙な身震いと共に聞こえたのは
まるで何かを食らうような息を吸う音だけだった