第10章 離れてしまった仲間たち
「よかった…。ズズ、私を海岸まで運んでくれたんだってね。ありがとう」
ぎゅっと抱きしめると、ズズはヒレを左右に動かした。えなもころも私の顔を満遍なく舐め、ちうも私の手に自分の体をなすりつける。この子達が落ち着いているということは、あとの2匹も無事だということだろう。
「やっぱりご主人様の元気な姿が1番の薬だね。皆、あなたを心配して、この部屋を離れなかったんだよ。彼らも治療が必要だったから、無理やり引き離しちゃったけど、ずっと元気がなくてね。よかったよかった」
嬉しそうにちうの背中を撫でる女性。私はお礼を言った。
「すみません。助けていただいてありがとうございました。私はエメラルドと言います」
「私はタツ。ここはジョウト地方とホウエン地方の間の離れ島。何にもないところだが、ゆっくりして行っておくれ」
私の肩をぽんっと手を置くと、部屋を出ていってしまう。……何で私が海に漂流していたのか追求しないでくれるようだ。ありがたい
「……ズズ。ここにいるのは私たちだけ?」
「ヌマッ」
すると、ルビーもサファイアもタニさんもここまで流されてはいないようだ。…無事ハギ老人と合流できていれば良いが。
「ちゅっ!」
ちうが私に弱い電気を向けた。ピリッとした静電気が私を励ましてくれる。
「うん。そうだね。あの二人なら大丈夫」
それにあの二人以外にも気になることがある。私たちを助けるかのように現れたあのはかいこうせん。あの方向は、恐らく海上で打たれたもの。そして、それを命じた人に心当たりがあった。あの竜巻がポケモンの技であることを見抜き、かつ足場が不安定な海で打ち、またそれをなんなく成功させることのできる人物。
「あのクソ親父以外にいないでしょ」
何故か確信が持てた。この世ではかいこうせんをうてるポケモンを持つトレーナーなど多くいるのに。そして、鉢合わせをしなかった自分の強運に心から喜んだ。