第11章 カイナシティと母親
「バウっ!!」
最初に沈黙を破ったのは、えなだった。えなは母に駆け寄り、嬉しそうに喉を鳴らした。えなに限らず、ころもずずもちうも母が好きで……あ、やばい…!!
「えなちゃんもずずちゃんも、ころちゃんもちうちゃんも元気そうで何よりだわ」
ボールから飛び出したみんなが母に駆け寄り、嬉しそうにみんなの頭を撫でる母。私は出しかけた右手をそっと下ろす。……これで逃げることが困難になった。ふと、ヨギちゃんの鋭い瞳が私に向けられる。
「…ひ、久しぶり…ヨギちゃんも元気そうで何より……!?」
ドスドスと大きな音をたて、ヨギちゃんがこちらへ3歩でやってきた。そして、
「うぐっ!?!?!?」
その巨体で抱きしめられた。
「ギャギャギャ」
「ヨ…ヨギちゃん……く、苦しい…!!!!」
ヨギちゃんは、必ずと言っていいほど私を抱きしめた後、それから中々離してくれない。1度捕まったら最後、母の言葉があるまで離すことはない。私は昔からこの強烈なハグが苦手だった。なにしろ、彼女の力は山1つ吹き飛ばすくらい強いのだ。手加減してくれていることは分かるが、たまに興奮しすぎた時は私の脆弱な骨がぴきぴき音をたてることもあり、気が気ではない。
「ヨギちゃんありがとう。すぐにポケモンセンターに連れて行ってあげるからね」
しかし、それはすぐに終わった。意外にも母はすぐにヨギちゃんをボールへと戻した。……てっきり拘束されたまま連れて帰ると思っていたのに。
「…エメちゃん」
母が私の名前を呼び、私は母の顔を見た。母は少し疲れた顔をしていた。