第10章 離れてしまった仲間たち
~サファイアside~
私の脳裏に、私が意識を取り戻し、最初に見た光景が浮かぶ。それは、私が負けたおばさんにエメが勝つ姿だった。私はそれを消すかのように強く目をつぶった。
「ポケモンバトルしたことない? 嘘じゃん! やっぱり強いじゃん! そうだよね、あのセンリさんが親なんだもん、強くないわけないじゃん!! 今まで、私馬鹿みたいじゃん!!!」
吐き出す言葉と共に涙が溢れ出る。私はゴシゴシと目をこすった。今まで黙っていたルビーが口を開けた。何よ…どうせルビーだって私のこと…
「そんなわけないだろ」
しかし、ルビーは私の頭に手を置き、私の髪をぐちゃぐちゃにした。
「お前が、僕達を守ろうとしてくれたこと知ってるよ。自分しか戦える人がいないって思ったんだろ? 僕もエメも分かってて、お前に甘えてた。こめんな」
ルビーのそんな声は久しぶりだと思った。私が泣いている時、必ずこいつは真っ先に私の隣に来てくれていた。小さい頃からずっと。最近は全くなかったが……やはり双子と言っても、普段頼りなくても、私より弱くても……こいつは私の兄なのだと実感する。
「お前は十分強いよサファイア。既に旅を始めている子たちよりずっと強い。だから焦るな。お前が焦っても昔からいい方向にはいかないんだからさ」
その声と私を慰める仕草に、パピィを思い出した。昔から、ルビーはマミィ、私はパピィに似ていると言われてきたが、私はルビーの方が似ていると思っていた。ルビーの弱音をすぐ吐くところ、パピィにそっくりだ。
「お前の憧れるセンリさんも言ってたろ? 強さは勝つことだけに有らずってさ。強さを求めるには、自分の弱さを認めてこそ、その純度は高くなるって」
だから、お前は今強くなってるんだと、ルビーは言った。
「ほら、そろそろエメを探しに行くぞ。それに、母さんも追いかけて来るしな」
そう言って、私の手を引くルビー。じんわりと伝わってくる温かさに、心当たりがあった。昔はよくこうしてたっけ?私は頷き、そして口を開いた。泣き過ぎて、言葉はいい辛かったが、ルビーは私が言い終わるのを待ってくれた。
「……さっき…ごめん」
「お前が僕にかける言葉なんて今更だろ」