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可愛いポケモンに囲まれて

第9章 捨てられ船



風が渦を巻いている。強い風が船の1番高いところに集まり、そこには引き寄せられたポケモンたちが。そして、強い竜巻のような風の中からは、2体のポケモンの姿が見えた。1匹はぺリッパー、そして2匹目は…この辺りでは絶対に見られないポケモン。

「……フローゼル?」

ブイゼルの進化形であり、シンオウ地方で度々確認されているポケモン。なんでホウエン地方に…。私の脳裏に浮かんだのは、サファイアの言葉。

「うん。最近ね、そういうのが増えてて困ってるの。父さん曰く、誰かが持ち込んでるとかなんとか…」

誰かが他地方のポケモンを…?何故?

「エメ!」

私は思考を中断し、振り向いた。ルビーが空を指さしている。サファイアは意識を取り戻したようだ。

「おっほほほ!!」

辺りに聞き覚えのある高い声が響き、私はその声がした方を見上げた。隣のズズが唸る。

「もう終わりよ! これはね、目的のブツを手に入れた後、この船を塵芥にして証拠を跡形もなく消してくれる技!!『かまいたち』 。目的のブツは見つからなかったけど…いいわ!! 我々の邪魔をしたお前を海に沈めてやる!!!」

狂ったように叫ぶボロボロのイズミの後では、男が慌てた様子で制していた。

「イ、イズミさん!? 何をしているんです! こんなの……」
「うるさいわね!! あんたは黙ってなさい!!」

方向性の違いから言い合う2人。その間にも、風の威力が増している。私は叫んだ。

「水か鳥ポケモンを出して!早く!!」

「う、うん!」

あの技はまずい。フローゼル1匹がどうしてあのような威力の技を出せるのかは分からない。ぺリッパーにはそんな能力は無いはずだ。しかし、そんなこと考えている余裕はない。
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