第9章 捨てられ船
「グラエナ! ぺリッパー! 残りの1匹も片付けてしまいなさい!」
あーあ。やっぱり…。私はイズミのその言葉を聞いた瞬間、ため息をついた。
「あんたやっぱり、ダメなトレーナーだよ」
私の呟きは、思ったより部屋に響き渡り、イズミの耳に入った。立ち込めていたホコリは再び舞うことなく、ゆらりと床に落ちた。
「グラエナ!? ぺリッパー!?」
イズミはその光景を見て、動揺しているのを隠しきれていないようだった。勝利を確信していた顔が、今では崩れ落ちている。床に倒れたのは、ズズではなく、ぺリッパー。その倒れている側には岩が崩れている。そして、ズズの腕の中でぐったりとしているグラエナ。2匹とも戦闘不能ではないが、急な指示に対応出来ないほどのダメージを負っている。
「ぺ、ぺリッパー! みずのはど…」
「ズズ! グラエナを!!」
私の指示にズズは腕の中のグラエナを、なんとか飛び上がったぺリッパーへと投げ上げた。グラエナがぺリッパーと衝突し、2匹とも壊れかけの天井を突き破る。
「ころ!!」
…お願い…。私は祈った。さっきはまぐれで出た技だが、ここであの技が出なければ意味が無い。あの2匹を…イズミを…私たちから戦線離脱させなければ、私どころかルビーやサファイアたちにも危害が…。お願い…!!
「エネッ!」
弱気になっていた私を向いて、ころが鳴いた。その鳴き声は、私を勇気づけ、そして私に言ってくれているようだった。
『大丈夫』
って。だから、私は叫んだ。それに応えるために。
「ねこのて!!」