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可愛いポケモンに囲まれて

第9章 捨てられ船


「…………ふーん。それがあなたの手持ち」

私が出したのは、ころとズズだった。ズズは張り切って私の期待に応えようとしてくれてるし、ころは珍しく相手を威嚇している。二匹は会ってからほんの数日しか立っていない。それに、私はポケモンバトルの経験が殆どないため、2対2のバトルは初めて。しかも、相手は強敵。私は大きく息を吸った。

「どんな相手かと思えば、エネコにミズゴロウ? そんな小さい体で、私のぺリッパーとグラエナの攻撃には耐えられるのかしらっ!!」

イズミの合図で二匹は一直線に飛び込んできた。私は避けるよう指示し、後にいるルビーやタニさんに叫んだ。

「できるだけ隅に下がって!!」

ここは、客室と客室の仕切りの壁が無くなってしまっているため、他のところよりも3部屋分広い。しかし、そうは言っても、こんな限られた場所でのポケモンバトルは危険を伴う。私はそう注意を呼びかけると、指示を待ちながらも敵の攻撃を避けている二匹に、命じた。

「ズズ、どろかけ! ころ、しっぽをふる!」

ズズのどろかけは、ぺリッパーに向けて放たれた。しかし、それはすんなりとかわされてしまう。私はそれを何度も命じた。焦りからか、額には汗が滲む。私はそれを何度も拭った。そんな私を見て、イズミは高慢に笑った。

「同じ攻撃を何回しても無駄なものは無駄よ!! ぺリッパー!!」

来る…。私は大きな力を肌で感じた。あのぺリッパー、主人の指示がなくてもたくわえる技を行うよう訓練されていることは分かっていた。先程から、グラエナが機敏に動いているのは、ぺリッパーまで気が回らなくするためのカモフラージュだろう。すでに2回、たくわえた。あと1回たくわえられ、そしてはきだされたら、ころかズズ…どちらかが戦闘不能になる。そしたら私の負けだ。

「………ズズ!!」

しかし、何故だろう…。そのぺリッパーの3回目のたくわえるよりも、あの小さな二匹の後ろ姿の方がたくましさを感じる。客観的に見れば、あちらの方が有利なのに…だ。それは初めての感覚で、私は少し戸惑った。しかし、私の中には、すでに恐れというものは無くなっていた。
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