第9章 捨てられ船
唯一の逃げ道が塞がれてしまった。私は伸ばしかけていた手をゆっくりと下ろした。
「二度目があると思ってたの? 逃げられると? 舐められたものね」
この女…イズミと言ったっけ?気持ち悪い笑みを浮かべる。獲物を狩る余裕の笑み。私はこの笑みを見たことがあった。だから、その表情に吐き気を催した。
「……どうする気?」
吐き気を我慢しながら私は聞いた。イズミはそうねぇ…と既に決まっている答えを出し惜しみするかのような素振りを見せる。私の反応を面白がっているのだ。その隙に考えろ。何か…何かないか…この状況を打破できる何かは…。私の手持ちは全部で6体。えなのいかくは相手を一瞬ひるませるだけで、えな自身、あのぺリッパーを倒す攻撃力はない…。ころのメロメロは…ダメ…あのぺリッパーはメスだ…。ズズは……またあの子に甘えてしまうのは……。ホムラのときのことが頭を過ぎった。私のせいで傷を負わせてしまった。わたしのせいで……。
「やっぱりポケモントレーナーにはポケモンバトルかしら? あなたをこてんぱに負かせて、私以上の屈辱を味あわせてあげるわ!!」
イズミは、ボールを取り出した。中から出てきたのは、グラエナだった。
「安心して。あなたをこてんぱにした後、あなたのポケモンたちは私たちの役にちゃんと立ててあげるから!」
……あんな失敗はもう起こさない。絶対に私がこの子達を守る。そのためには、誰かを戦わせなくてはならない。でも誰を……。その時。無意識に触ったボールがガタガタと動くのが分かった。