第9章 捨てられ船
「な、何!?」
立て続けにもう一度大きな音が辺りをこだます。その音に身体を震わせ、私の腕を掴むルビー。私はハッとした。ここにおらず、かつ相手が強敵でも迷わず突っ込む人物……サファイアだ。私は音のした方へ走り出した。
「えっ!? まっ、待ってよ」
あのプライド高女…あいつはキレたら本当に何をするか分からない…。
~敵 女視点~
「フン! しぶといガキね」
私は目の前のガキにそう言った。ガキは笑いながらも汗を拭った。ガキが出したポケモンはほのおタイプのワカシャモ。私の敵ではない。そう思って始めた戦闘が、すでに数分経ってしまった。相変わらず笑みを浮かべるガキに私は攻撃を命じた。
「チャモ!」
しかし、それはやはり躱され、ガキの後ろ側には大きな穴がもうひとつ空いてしまう。すばしっこいガキ。それが私の印象だった。
「今のはきだすこうげき! すっごい!! さっきより威力は落ちてるけど、1回のたくわえるでここまで!! うひゃぁ!!」
そして、うるさい。私が攻撃する度に、ガキは興奮した様子で言うのだ。
「おばさん強いね!!」
「おばさんじゃないわよ!クソガキ!!」
このやり取りは2度目だか、何回でも腸が煮えくり返る。まだそんな歳じゃないわよ!!!
「チャモ!!」
不意にきた攻撃を私はぺリッパーに避けさせる。ひっかくこうげきか…。こいつ、一つ一つの技は大したことないが、嫌なタイミングで攻撃を出してくるのよね…。しかも、このワカシャモ。主人の無鉄砲な性格を上手くカバーしつつ、攻撃を繰り返している。
「…なるほど。これがポケモンとの絆とやらね。…忌々しいわ。さっさと切り上げて、あの生意気な口をきいたガキをこてんぱにしに行かなきゃならないのに!」
そう、先程のガキ。あの声には聞き覚えがあった。あれは…そう、カナズミシティでのあのガキだ。あの時の屈辱は今でも夢に見る。
『…イズミさん。あなたには失望しました。このような簡単な任務もこなせないとは』
リーダー、アオギリのため息が今でも耳に残っている。あの任務は、マグマ団に送り込んだスパイから例のブツを受け取るという簡単なものだったはず…なのに!!気づけば、奥歯が割れそうなくらいに歯を噛み締めていた。ここであのガキをボコボコにしてやる!!私はぺリッパーに攻撃を命じた。
「ぺリッパー!みずのはどう!!」