第9章 捨てられ船
そう言えば、直行型だったっけ?私はぼんやりとそう思いながらボールを投げた。出てきたのは、黄色い耳が可愛いポケモン。
「ピッチュ!」
周りに電気がピリピリと流れ、それが霧の向こうの敵にも見えたのだろう。何かの技を口走る声が聞こえた。私はぼけっとしている2人の手を引き、走り出した。
「ちう、フラッシュ」
敵よりも私の方が早く指示し、周りは一気に明かりが飛び散る。私はチカチカしてきた目を何度も瞬きし、目の前に見えてきた出入口には行かず、草木が生い茂っているジメジメしたところに入った。思いっきりドアを開けることを忘れずに。
「くっ!! 少しの知恵はあるみたいね!」
そして、思った通り直行型の彼女は、ポケモンを引っ込めると、ドアの中に入っていく。その場には変わらず濃霧と、男のポケモンの羽ばたき音だけ。
「……いるのでしょう? 我々はあなた方に危害を加える気はありません。大人しく出てきてはどうですか?」
…ちっ。こっちの男の方が厄介だったか…。私の後ろでは、頼りにならない二人組みが体を寄せ合い震えている。
「今、出てきてくれさえすれば、見逃してあげましょう。君たちのひとりの暴言も聞かなかったことにします」
段々と、声は近づいてくる。恐らく、男は私の安い挑発に引っかからず、女よりも遠くのところでフラッシュを受けた。だからその効果も女よりも効いてない。つまり、私たちがドアの中に入らなかったことはあいつの目から見て明白。さて、あいつらを引き離すことは出来たが…ここからどうするか…。
「そうそう! キャモメと一緒にいた少女…彼女も君たちの仲間なのでは? 彼女の行方、気になりませんか?」
私の後ろでルビーが反応するのが分かった。…サファイアと戦闘したのか?しかし、それにしては静かだった気がする。…カマをかけているのだろう。私たちの反応を見ている。私は騒ぎ出す前にルビーの口を塞ごうとした。が、
「エメ…どうする?」
震えていたはずのルビーがいつの間にか私の隣にいた。しかも、何かしらの行動を起こそうとしている。ポケモン嫌いで、戦闘すら出来なさそうなこいつが!私はそれに少し驚きながらも、口を開いた。