第9章 捨てられ船
「エ…エメ!! どうしたっていうのさ!? 急に…はやいって!」
叫ぶルビーに構わず、私は足を速めた。私の脳裏にはホムラとのバトルの様子が次々と浮かんでいた。あのときホムラには、ああ言ったものの、クソ親父の姿をしたホムラと昔のクソ親父が唯一被るところがあったのは認めざるを得ないことだった。ホムラは軽く見られそうな態度を取っていたものの、あいつもまた『強さ』を追い求める1人だった。ただそれを掴もうとする方法が異なるだけで、本質的なものはクソ親父と同じだ。…………………やっぱり外に出るんじゃなかったかな。嫌なことばかり思い出す……。
「エメってば!! あっ!」
その言葉と同時に私は地面に倒れた。どうやら考えに耽っていて、人にぶつかってしまったようだ。
「ひ、ひと!? なななんでここに…!? 取り敢えず、大丈夫かい??」
差し伸べられた手を掴み、私は立ち上がった。辛うじて服は濡れなかった。古い船だから所々床がしけっているのだ。
「……………。」
人見知りの私は黙ってお辞儀をし、1歩後ろに下がる代わりにルビーを前に出した。
「えっ…また??」
私はコミュ症だといっているだろう。
そういう目線をルビーに投げかけると、ルビーは渋々その人に話しかけた。
「実は妹とキャモメを探していまして。見かけませんでしたか?」
すると、その人は少々考えるような素振りを見せた。しかし、首を振り見ていないと言った。
「………どこに行ったんだあいつ…」
ため息をつくルビーに私は耳打ちをした。
「えっ……自分で聞き………痛たた…分かったよ。……ここにはあなた1人で?」
「あぁ、うん。僕はある調査でこの船に来てね。見ての通りこの船ボロいから、大勢で来ても床に穴が開くだけだと思ってね。今思えば数人で来れば良かったなと」
………となると、あの足跡のうち一つはこの人か……。じゃあ、あとの二人分の足跡は誰……まっ、私には関係ないか。私はルビーの服を引っ張った。
「痛っ!? え?もういいの?この人に手伝ってもらおうよ」
馬鹿野郎め。この人は仕事でここに来ていると言ったばかりだろう。それに私は人見知りなんだよ。
「私は構わないよ。こんなところに子供だけで探すのは危険だし。……それにちょっとだけ心細かったしね」
……………この人、ルビーと同じ匂いがする