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可愛いポケモンに囲まれて

第7章 ハギ老人とムロタウン


私は、モンスターボールに手を伸ばしかけた。なにせ、トレーナーとのポケモンバトルはこれが初めてなのだ。まだ日が浅いズズを私は持て余してしまいそうで、怖かった。

「………ズズ?」

しかし、ズズは敵を一心に見て、その姿は私の指示を今か今かと待っているかのよう。…………そっか。ずっと戦いたがってたもんね。

「……うん。君に任せるよズズ」

私はモンスターボールを取らず、敵を見据えた。敵は余裕たっぷりと私たちを見ている。


「ようやくやる気になってくれたのか?」

ホムラが若干嬉しそうに言う。この変態が!!そう蔑むと、にやっと笑った。……きも

「なら、俺もやる気をだそう。マグカルゴ」

ホムラの声に応えるように隣のマグカルゴの様子が変化した。というのも、燃え始めたのだ。

「なっ!?」

いくら火属性のポケモンとはいえ、その身に炎が灯ればただでは済まないだろう。しかし、熱すぎて私は1歩も踏み出せずにいた。

「……心配するな。ただの幻だ」

熱さから目が乾き、目をしばしばとされると、聞き覚えのある、そして聞きたくなかった声が私の耳に入ってきた。いつの間にか熱さがなくなっており、私は恐る恐る目を開けた。

「ひっ!?」

目の前には対峙したくなかったあの人の姿がいるではないか。私は目を開いた。何故ここに!?気づけばホムラの姿は消えていた。

「…………そんなに恐れることもないだろう? それとも俺はお前にとってそんなにも恐ろしい存在に見えるのか?」

あの頃と変わらず、しかし多少違和感のある口調でそいつは言った。隣には相棒のケッキングもいる。相変わらず、パートナー同様鋭い目を私に向けている。

「…………クソ親父……なんで………」

「………口が悪いな。俺はそんな風に教えたつもりは無いが?」

反射的にビクッと体が震えた。やばい、久しぶりのクソ親父に慣れない。……大丈夫。大丈夫。シュミレーションはバッチリなはず。私は大きく息を吸い込んだ。

「家にろくに帰ってこなかったあんたが言うなよ」

大丈夫。大丈夫な……はず。あのクソ親父をボコボコにするチャンスだ。手の内が読まれているころやえなとは違い、新米のズズの存在をクソ親父は知らない。この勝負……勝てる。私の頭はクソ親父に勝つそれだけに占めていた。
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