第6章 カズミシティに到着
「…長くなりそうだから私外にいるよ」
喜ぶサファイアに私はため息をつき、外へと出た。時刻は昼前。何か食べ物でも買っておこうか…そう思っていると、目の前で一人の少年が転んだ。
「………大丈夫?」
コミ症な私だがつい声をかけてしまうくらいに、盛大なこけっぷりだった。少年は笑って頷く。
「ありがとう。ちょっと慣れてなくて……ゴホゴホ」
急に出た咳が止まらないらしく、私は近くのベンチまで連れていった。
「ごめん。僕体が弱くて、空気がいいって言う街に療養しに向かってる途中で、おじさんとはぐれちゃって……ゴホゴホ」
少年の隣ではラルトスが心配そうに少年の背中をさすっていた。
「この子、僕の友達なんだ。ある人に頼んで朝一緒に捕まえてもらった大切な友達。ジムリーダーのセンリさんって分かる?」
私は吹き出した。咳き込む私にキョトンとする少年。…まさかとは思うけど、この少年、あのクソ親父から送り込まれた刺客とか言わないよね……。待て。深追いは危険だ。まずはあのクソ親父の情報を……
「も、もちろん。それはよかったね。…それでそのく…センリさんって今もそこでジムリーダーしてるの?」
「ううん。ちょっとお休みするんだって。知り合いの子供を探す…とかなんとかで。海の方に向かったよ。性格から考えて、まずは海へと行きそうだからって。凄い子供さんだよね」
またまた私は吹き出した。読まれてた!?危なかった。二人が止めなかったら私は意地でも海に出てただろうから……。恐ろしさで体が震える。
「だ……大丈夫??」
「……大丈夫」
あのクソ親父に行動が先読みされていたというショックを隠せないでいた私に、その少年は思いついたように手を叩いた。
「そうだ! ちょっと見てて!! ラルトス、ねんりき!!」
『 ラル!』
ラルトスの目が光ったかと思うと、ゆっくりと少年は宙へと浮いた。少年はくるくると一回転をして私に微笑んだ。
「凄いでしょ!! 最初はなきごえしか覚えていなかったのが、トウカの森を抜ける頃には強くなっててね! 強くなったんだよ!!」
確かにすごい。こんな小さな体にこんな力があるなんて。素直にそう言ったら少年は本当に嬉しそうに笑った。