第3章 家出決行
「う、う…本当にここにサファイヤが?」
「ねぇ、うっとおしいから離れてくれないルビー」
私にベッタリと引っ付くようにして歩く彼を私は押しのけるようにして先を進む。多分サファイヤのことだ。珍しいポケモンを見つけたりして、寄り道をしているのだろう。まったく、朝が来る前に大人達の手が届かないところまで行く必要があるのに。これじゃあ、なんのために夜に決行したのか分かったもんじゃ……。
「エ………エメッ!!」
「ん?」
ルビーが指さした方を見ると、何やら明かりが。あれは………ひのこか。
「ってことはサファイヤか。サファイヤー」
私が近づこうとすると、えなが唸った。この子とサファイヤは面識があり、かつサファイヤに懐いているこの子が警戒するわけがない。ということは………
「あれはサファイヤじゃなくて、別のポケモンか。危ない危ない。ありがとえな……えな?」
えなはまだ警戒を解かない。おかしいな。えなは頭がいいから、私が警戒すると途端に唸るのを止める。危険を知らせるのがえなの役割なのだ。
「えな、どうし……うおっ!?」
我ながらおっさんのような声を出してしまった。しかし、隣にいる奴よりもまだましだというものだろう。ルビーはかすれた悲鳴を出して、腰が抜けてしまったのだ。というのも、その火がこちらに向かって攻撃してきたからだ。
「おば……おば……おばけ!!!!!!」
お前は怪談系もダメなのか。つくづくダメなやつだ。そんなルビーを横目に私は目の前の敵に集中した。火はユラユラとしながらこちらの様子を伺っていた。そして、次の攻撃が来ようとした時、
「チャモ! 鳴き声!!」
耳がほんわかするような可愛い鳴き声がしたかと思うと、上からサファイヤが降りてきた。
「んでもって、ひっかく攻撃!」
シャッと鋭い攻撃がしたかと思うと、途端に目の前の火が消えた。
「あー! また逃げられた!! 捕まえようと思ったのに! ……あれ? エメ。こんなところでなにしてんの?」
「家出中。ルビーもいる」
「あっ! そういえばそうだった。ごめん忘れてた! ……げっ。ルビーもいるの」
「……君たちだけじゃ心配だからね。早速先が思いやられるよ」
ルビーと サファイヤが言い合いを始めるのを他所に私はさっそく図鑑を開いた。
「サファイヤ、今のヒトカゲだって。なんで野生のヒトカゲが」