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可愛いポケモンに囲まれて

第10章 離れてしまった仲間たち


~誰かside~

「あの子が目を覚ます直前まで、部屋から離れなかったのは誰でしたっけ? あと……」

「分かった!! ………もう止めてくれ…」

タツの止まない追求に音を上げた俺は、観念したように首を振った。こいつには昔から適わなかったな。

「……言ったって仕方ないだろ。俺はただの年寄りだ。結局あいつには…生きていく術と僅かな期間の住処しか…」

「十分ですよ。デンさん」

タツが俺に微笑む。十分です…もう一度言い笑った。

「血が繋がっていない私たちがあの子にしてあげられたことはほんの僅かです。でも、間違いなく、デンさんの思いは伝わっていたと思いますよ」

「……馬鹿なこと言うな」

仏頂面のあいつとさっきのガキ…エメラルドが重なった。…本当に聞いていた通り、そっくりだな。地に腰を下ろしたエメラルドが呟いた言葉は、以前あいつが言ったような台詞だった。あいつは俺に不満があってここを発ち、旅へでた。そして俺はそれを止めなかった。それが事実だ。

「本当ですよ。だって、エメラルドちゃん、目を覚まして一声目の言葉…自分のことよりもポケモンたちのことを心配していたんですよ? そういうところ、貴方そっくりなんですもん」

きっと貴方の背中を見て育ったあの子が、そうエメラルドちゃんに教えたんでしょうね、とタツがコロコロと笑う。

「エメラルドちゃん、優しい子でしたね。ポケモンも人も大切にする子。…まるで、貴方とあの子を見ているようでしたよ」

「……馬鹿なことを言うな」

……そうか。あいつ、ちゃんと親してたのか。親を知らないあいつが、どうしたもんかと思っていたが……。ふと、懐に入っているポケナビが震える。…これが鳴るのは久しぶりだ。

「『偉大な道を通るにしても、まずは1歩目から』。あの子の由来ですよ」

「………ああ。そんで、相変わらず勘がいい奴だ」

しみじみと感慨深くなっているタツに俺は、震えるポケナビを見せた。そこには登録していない番号が表示されていたが、このポケナビの番号はある奴しか教えていない。

「………なんだ遅かったな。お前の探している子ならもう行っちまったよ。お前も鈍ったもんだな」

そして、エメラルドも父親に似て勘がいい。あそこでNOと言っていなかったら、今頃捕まっていただろう。父親に逆らって絶賛家出中の我が子を、血眼になって探す父センリによって。
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