第10章 離れてしまった仲間たち
「そんな大技があるんだったら、最初から出せっての…」
私は地面に尻をつけ、疲れた体をいたわった。男を伸びさせたデンさんがこちらへ寄ってくる。…今の聞こえたか?
「こいつに無茶はさせられんと言っただろ」
「痛い!?」
やはり聞こえていたらしいデンさんのゲンコツが頭を響かせる。男がデンさんをクソジジイと呼んでいたのも理解出来るなこりゃ。
「…………おい」
デンさんが不機嫌そうにこちらを見るので、私は慌てて首を振った。やばい…今の口に出てたか…と。しかし、デンさんは私から顔を背け、
「…お前がその気なら、置いてやっても構わん」
と言った。私はぱちくりとさせ、首を傾げた。そして考えた結果、デンさんなりの感謝の気持ちということに行き着いた。
「おい! 何黙っている!」
さっさと言わんかとばかりに怒鳴るデンさん。これはさっさと結論を出さないと行けないらしい。確かにその提案はありがたい。これだけ強いデンさんがいるならば、もしクソ親父が訪れても遠ざけてくれるやもしれない。そうなれば、私のエンジョイライフの始まりだ。………しかし、私が出した答えはNOだった。
「…せっかくですが…お断りさせていただきます」
デンさんは無言で私の方をみた。理由を言えということか?
「……友人が私を探しているでしょうから」
クソ親父のことを思い出した瞬間、脳裏に過ぎったのはサファイアとルビーのことだった。
「…………なら、さっさと出ていけ」
「いや…そうしたいのは山々ですけど、次の定期船は………え?」
パクッと何かに啄まれたかと思うと、私は空中にいた。
「ええええーーーーー!?」
「礼はいらんぞ」
部屋を出ていくデンさんに、私はぎょっとし、慌ててちうをボールに戻す。なにせ、今の私は…カイリューの口で支えられているという不安定な状態なのだから。