第10章 離れてしまった仲間たち
「俺が暴れている間、お前はタツたちを解放しておけ」
そう私に言うと、どこかへ走って行ってしまったデンさん。…恐らく自分のポケモンを取り返しに行ったのだろう。置いてきぼりにされた私は、取り敢えずタツさんたちが捕まっているところを探すことにした。
「……それにしても…なんでデンさんだけ別に捕まってたんだろ」
私は館内の地図を見ながら首を捻った。しかし、分からないものをいくら考えていたって仕方が無いし、めんどくさい。それにこの地図を見て、ここがあの近づいてはいけないという工場なのは明白。面倒なことには変わりがない。次の定期船には絶対に乗り込まなければならないのだが…
「…次の角も人の気配はなし…と。あー…あのまま溺れ死んだことになってないかな…」
あのクソ親父もいくらなんでも、死の世界まで追いかけようとしないだろう。そう願いながら角を曲がろうとした時だった。
「きゃっ!?」
気配がなかったはずの曲がり角でぶつかってしまう。身構えたが、服装は赤でも青でもない。華奢な少女が後ろへ倒れそうになるので、思わず手が伸びる。
「あ…ありがとうございます…」
高い声で慌てたように眼鏡を上げる少女。年は私より少し上だろうが、何だか頼りなさげなおさげという印象だった。おさげの少女は私を見たが、ここでも私のコミュ障が発揮し、私は立ち去ろうとした。しかし
「あ、待って!! 」
と少女は私の腕をがっしり掴む。辺りはちらほら慌ただしい声が聞こえてくる。…デンさんが暴れ始めたようだ。
「私はリサ。あなたは……むぐっ!?」
私はその口を手で塞ぎ、開いていたドアから部屋に入る。
「……エメ。悪いけど静かにしてて」
ドアの隙間から様子を伺う私の姿を見て察したのだろう。少女はもごもごするのを止める。
「おい! カガリさんはどこだ」
「カガリさんはお留守だ!! 俺らで対処するしかねぇ…」
間一髪。忙しない足音が消え、私はふぅっと息を吐いた。そして、外へ出ようとした時、手を離した少女の口が開く。
「…これからどうするの?」
「……囚われている人たちを…解放する」
リサは私の言葉にポカンとした。…そんなに変な事言ったかな…。私が構わず外へと出ようとすると、
「じゃあ、私も」
彼女はニコッと微笑んで、そしてタツさんたちが囚われている場所への案内役を名乗り出てくれた。