第5章 あの日から
「あ、」
目元に違和感を感じて手をやると、やっぱり濡れていた。
横「どうしたん?怖い夢でも見たん」
「うん……怖い夢、なのかな…」
居心地のいい夢ではないことは確か。
錦「どんなん?ゾンビ??」
「亮ちゃんの怖い夢はゾンビなのね…」
錦「はっ?!ぜんっぜん怖ないし!!」
…なんでそこで慌てるのかは知らんけど…
村「ただの怖い夢とちゃうんやんな?」
「え?」
村「やってお前、ほんま怖い夢見たら『わー!!びっくりしたー!うーーーわ怖かったわー!!』て騒ぐやん。」
「…わたし普段そんなにオーバーかな」
さぁ?とヒナちゃんが八重歯を見せて笑う。
渋「まぁ話したら怖いもんも怖くなくなるかもやん。きのこちゃうなら聞いたるで」
大「あ、やっぱしすばるくんの中で怖い夢ってきのこなんやw」
たっちょんの言葉に『うん』と力強く頷くすばやん。
「ふふっ……うーん…じゃあ…きのこじゃないし、聞いてもらおっかな…」
そしてわたしは意を決してあの夢を話した_______
錦「そっか…」
話終えると亮ちゃんが小さく相槌を打った。
話したせいでみんなの雰囲気まで暗くなってしまった。
「…ごめん…やっぱし話さないほうが____」
渋「なぁ」
話さない方が良かったと言おうとした時、すばやんの声が響いた。
渋「内は、死んだんか?」
力強い目がわたしを射抜く。
「…へ?そんなわけ、ないやん」
博貴は生きてる。もちろん。
生きて、頑張ってる。
わたしたちとは少し違う道で。
渋「やろ?ほんなら泣くことやあらへん」
「うん…?」
渋「もう前を見て頑張ってるやんか。俺らも、内も。泣くことやあらへん。頑張ろなって励ましあって、笑い合うことはあっても泣くことやあらへん。泣いてたらそんなん失礼やろ。」
説明するのが苦手なすばやんは自分の言葉に詰まりながらもそう言った。
「うん…」
すばやんの言いたいことは何となく、分かった。
頑張ってる人を見て悲しみに涙を流すのは失礼だ。
今の彼を見ることが、敬意。
今の彼をどう支えれるか。
「ありがとう」
また涙が出そうになった。
今度は、嬉し涙が。