第3章 正夢リヴァイバル
あぁ…………泣き声がする
まさか泣かすなって言ってた奴がオレより先に雪乃を泣かすとは……
廊下の壁に寄り掛かりながら、その思考を巡らす
好き……か
雪乃は言われ慣れてない言葉だな
モテるモテないじゃなくて、好きだけどそこまではいかない
いかせたくない
否、いきたくない
「……誰かを傷付けたくないから」
だから俺に対しても謝るという行為を判断してやる
誰かを傷付けないで終わらすなんて、そんなの人間のうちは出来ないんだよ
誰かを傷付けてしまうのは……仕方ないことなんだよ
罪の意識を感じるな、なんて……そこまでは言えないけど
そんな自分が潰れるほどの罪悪感は背負わなくて良い
「……って、馬鹿だな。俺」
こんなことを本人に伝えずに思ってるだけなんて
伝えてやれば良いのに
手を差し出せば、握るって言われてるのに
……前からあるいざこざのせいで、こういうのを躊躇ってしまう自分が歯痒い
口出ししても、素直に受け入れられるとは思えない
またいつも通りの口喧嘩が始まる気がする
……だから言ったでしょ、渚くん
良いところだけ見ても、あいつは救えないって
根本的ところからぶっ壊さないと、俺が作り出した夢から覚めてくれないって
あいつが嫌ってるあいつ自身を見付けてやらないと……ダメだって
ここまでわかってるのに、何ヵ月掛かるんだよ
あいつが自分のこと嫌いなのなんて、一年の頃からわかってたのに
自分に苛立ち、舌打ちを溢すと頭になにか柔らかいものが乗る
「!」