第10章 未来的アナザーエンド
「……足りないよ……そんだけじゃ」
震えた声で呟かれた彼の言葉は
我慢を解いた
たった一人
居残りのように、この場所にとどまってくれた
殺せんせーとE組の思い出を
一人で繋いでいてくれた
苦しかったと思うし
辛かったと思う
どんな思い出でも、牙を向くときはあるから
まだ未熟だった自分達の残党が
無惨にも貴方を襲い、蝕むのなら
「……愛してる…………」
私が居る
私は、ずっと味方だから、信じているから
「…………足りない……もっとちょうだい?」
「……ん」
甘えた口調が耳を撫で
優しい口添えを要求される
フリーズするような感覚はなくて
逆に
時間が止まってくれたらいいだなんて、考えた
前のように
長く感じれたなら
幸せだと
「……泣いてる。カッコ悪いよ。もう大学生になるんだから」
「見なくていいよ」
「貴重だから見る」
指で涙を拭いて、こつんと額を当てる
嫌がった割には笑っていて
泣き笑いに近い
あぁ、そっか
こういう日常を
幸せって呼ぶんだ
「約束しよ、雪乃」
「なにを?」
「俺が殺せんせーとの約束を叶えたら、その時は……間宮を捨てて。指輪をもう一回、俺に送らせて」
「……まるでロミオとジュリエットね」
「好きでしょ?」
「ええ……好き」
教えてくれて、ありがとう