第10章 未来的アナザーエンド
……そういえば
前も髪の毛拭いてもらったっけ
あの時は、こんな丁寧じゃなくて雑だったけど
思い出して
静かに微笑む
それから
ずっと言いたかったことを口にする
「皆に会いたい」
たぶん
椚ヶ丘に唯一残ったカルマですら
全員とは会えていない
まず
あのクラス全員がちゃんと揃えるのは本当に
あの卒業式が最後だったから
今となっては難しいこと
それでも、会いたかった
「椚ヶ丘の成人式では、皆と会えるといいな。寺坂くんたちは来なさそうだけど、きっと狭間ちゃんが連れてきてくれそう」
寺坂くんたち、狭間ちゃんには敵わないから
「茅野ちゃんは綺麗になってるんだろうな。渚とはどうなってるんだろ。委員長組も気になるし、スナイパーコンビも気になる。あ、先生たちも」
私の口から溢れるわがままを
彼は黙って聞いていた
嫌そうに、ではなくて
とても、懐かしそうに
優しく、子供のわがままを聞くように
「原ちゃんは食べ過ぎてないといいな。岡島君と前原君に限っては、ニュースに取り上げられてなくて安心。神崎ちゃんとかもすっごい大人びてそう」
甘えさせてあげれなかった罪滅ぼし
なんてつもりは全然ないけど
私を好きでいてくれたお礼
独り占めの券
「カルマ」
「ん?」
タオルを持つ手に触れて
顔をあげる
「デート、誘ってもいい?」