第9章 好きになるまでカウントダウン
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『三年という月日は……あっという間だと、貴方は言いました』
「あら、また来てくれたの?後で飲み物持っていくから上がってて」
「ありがとうございます」
『でも本当は、三年は三年という月日なだけあって……貴方と過ごした三年と同じ月日なだけあって、長く感じました』
階段を上って、慣れたその扉を開ける
踏み込んだ毎回変わらない風景に少しの残念満と
少しの安心感を感じながら
持ち寄った綺麗に梱包された箱に軽く口付けをし、机の上に置く
「後二回……」
『何をしていたのか、何を思ったのか、何が嬉しかったのか……私にはわからないけれど、たったひとつだけわかることがあります』
部屋の中で小さく呟きながら
今朝がた届いたメールを眺め、微笑する
『2月11日、貴方は私におかえりと言います。私は貴方にただいまと言います』
約三年間、連絡を取り合わずに過ごした三年間
初めてとったメールはこれのみ
「カルマくん、今日も泊まっていくのかしら?」
彼女に良く似た笑顔は暖かなコーヒーを手に問う
それに俺は振り返って微笑んだ
「じゃあ、今日の晩御飯は一人追加ね。お父さんも喜ぶわ。また下に降りてきてね」
「暫く居てから降ります。一時間くらいで」
「そのくらいにご飯の用意しとくね」
パタンと扉が閉まり、俺は本棚から一冊の本を手に取る
『最後に、カルマ。三年間、貴方の誕生日を祝えなくてごめんなさい。偶然だけれど、日付がわかった日が丁度貴方の誕生日なのでおまけみたいですが文面に組み込みたいと思います』
一ページ目を開いて、また呟いた
『誕生日、おめでとう。カルマ。私はとっても嬉しいです』
「……俺も嬉しいよ。ありがとう、雪乃」