第9章 好きになるまでカウントダウン
「カルマ……?」
「これから不安とか恐怖とか、雪乃でも対処できずに困ることがあると思う。だから、そんなときに右手の薬指にはめて。心が落ち着いて、いつもの判断ができるようになるから」
カルマは優しく微笑んで、私の首にそれを付ける
「要らないときは首にかけていつでも使えるように持ってなよ。ネックレスなら表に出さなきゃバレねぇから」
「……右手、の……薬指じゃなきゃダメなの?」
「ダメ。アレキサンドライトの時もそうだったけど、やっぱりこういうのは雪乃知らないんだね」
右手の薬指、逆の左手の薬指の意味はちゃんと知ってるけど
他の指までは全然知らない
「残りの指にも意味があるけど、雪乃はそれだけ知ってりゃいいや。他のは雪乃ならそんなのに頼らずに出来るよ」
「出来るかな、私に」
「出来る、俺が言ったから間違いないよ。……これが俺からあげれる最後の"勇気"だからね」
「うん、ありがとう。ありがとう…………三年後まで、信じてます…………」
大好きです、カルマ
「……佳奈さんに迎えに来てもらわなきゃね。裏口回ってもらうか」
「初めよりは減ったから、たぶん大丈夫だよ」
「三十分後くらいでいい?」
「うん、お願いします」
本当は私が連絡しなきゃだけど
カルマもうちの母親に言いたいことがあるらしくて
カルマからお母さんへ連絡が入れられた
「じゃあね、雪乃。帰るときに連絡して」
「わかった。ばいばい、カルマ」
私たちの三年はここで一時終止符が打たれ、新たな三年へのカウントダウンが始まった
次に会うのは三年後
正確には二月頃には授業もなくなって、私は寮を出るから二年と十ヶ月くらい
卒業式には家から向かうつもりだ
だからそれまで
さようならだ