第8章 期待値アンサー
「流石に…………電車乗ったら追い掛けれないだろうね」
「…………うん」
その元気のない声に、チラリと視線を動かす
ギリギリだったな……
後少しで我慢できずにこいつは泣いてた
涙が縁に溜まっているのを見えないフリをしながら、流れる風景に戻す
「話したいこと……って、あれだったの?」
「……うん」
「続き、話してくれる?」
「……今はやだ」
「そ、」
まぁ、いっか
俺に嘘はつかない
話すと言ったんだから、きっと話す
「手……繋いでて…………いい?」
「良いよ。デート、って、言ってきたから」
「……ふふ、したことないじゃん」
「それもそうだ」
ほぼ毎日一緒にいるから
そういうのまでお互いに発想は起きない
思い出なんて、日常が埋め尽くしてるから
「……私、椚ヶ丘に来てよかった。よかったよ」