第8章 期待値アンサー
「?……どうして?」
「…………雪乃が、一番怖いことって……渚は知ってる?」
僕はその問いに、頭を巡らせる
間宮さんはカルマを嫌っていた
それは自分への贖罪
自分を許してほしくなかったから
でも、それは自分を否定して欲しかったからで
本当の意味で嫌っていて欲しかったかは……謎だ
僕が悩んでいるとカルマが口を開く
「あぁそっか。渚にはこれは話したことないんだっけ」
「ヒント?」
「そうなるかもよ。雪乃が俺を嫌い続けた本当の理由…………殺せんせーも知らない特典情報だよ」
瞳を細めた彼は秘密をバラすように笑う
「雪乃はね、俺に信じてほしいから嫌ってたんだよ。自分を信じてほしいから」
その言葉は僕には羨ましい限りの言葉だった
けれど不思議と嫉妬は浮かばす
僕は回答を導けた
嫌っていた理由は信じてほしいから
本当に彼女が彼を嫌っていたなら……信じてもらわなくても良いはず
なら、そうまでしても嫌ったというなら…………
「……間宮さんはカルマに嫌われて、信じてもらえなくなるのが一番怖い」
「そうなるんだろうね」
確か、彼女は肝試しの時に怖いものを話してた
その時、カルマが自分だと言ったのを否定はしなかった
「恐怖なんて与えたかないよ。信じてやらないと俺は自分が許せない。俺が先に言ったら……雪乃はうそつきになる」
それは俺に嘘をついたことになる
俺を見るという、俺を好きでいるという約束を踏みにじることになる
嘘をつくということは、嫌われること
嫌われるのは
信じてもらえてないということ
それが、俺が雪乃に言わない理由だ
「きっと、雪乃は言ってくれるよ。信じてるから」
「早く帰らなきゃね」
「聞きたくないけどね」
「そんなこと言わない」