第8章 期待値アンサー
「え、私は普通に歩いてきただけだけど?」
私の肩に寄りかかったカルマを支えつつ、菅谷くんの質問に答える
「はぁ!?嘘だろ!どこ歩いてたんだよ」
「どこって……獣道を」
「隠れながら?」
「普通に」
さすがに真っ正面は無理だから獣道からだけど
それ以外は基本的になにもしてない
皆の反応に苦笑いの私に付け加えるように
カルマが口を開いた
「雪乃は存在感がありすぎて認識しずらいからねぇ。悪く言えば、見えてるけど放置でいいや的な」
「フォローになってない……あと重たい」
「フォローするつもりねぇもん。いいよ、膝枕でも」
「絶対嫌だ。それするなら岡島くんに抱き付くのを選ぶよ」
顔を覆いながら言う
仕方ない
本気で嫌なのだから
それになおかつ今は皆もいるのに
結局は我慢することにして
その場におとなしくしてる
「渚は?」
「あぁ、茅野と一緒に戻ったよ。頑丈さはカルマの方が上だし」
「手当てもしなくちゃだもんなー」
「雪乃たちも……というか、カルマが動く気になったら戻っておいで」
「はーい」
たぶん30分は動かないと思うけど
内心でそう思いながらみんなに手を振る
見えなくなったのを確認すると手を下ろし、深く息をついて表情を消した
疲れた
緊張の張り積めと
私への警戒……
それは皆はしなくていいけれど
私はしなきゃいけなかったから
普段の倍疲れたし
この人とやりあった疲労もある
なかなかシビアな一日だったなぁ
「雪乃」
「はいはい、なんでしょう」
そんなことを考えていると声がかかって
彼の寄りかかってた頭がこちらに向く
瞳を少しだけ閉じ、威圧する
「岡島に抱きつくの、やったら首輪に繋いでやるからね」