第5章 重要性プレイス
「……負けちゃったんだ。そのあとは、なんにも……覚えてないの」
「思い出さない方がいいかもよ。それに、今日は無理して話さなくてもいいのに」
ベンチに座って、少しの休憩
体が動かなかったせいで、下校すら疲れを帯びる
寄りかかった肩が暖かくて、帰ってこれたと痛感する
「忘れちゃったら、大変だもの」
「まぁね、その気持ちはわかるよ」
「ふふ……そうでしょう」
微笑んで、体を起こす
「平気?」
「平気、体、動くようになったから」
「そっか。あんま無理しないでよ。俺がみんなに殺されちゃうから」
「無事に届けろって、言われてたもんね」
「ほんと、理不尽すぎる」
愚痴をついてても、貴方は嬉しそうね
「……雪乃」
「うん」
「帰ったら、佳奈さんきっと泣いてるよ」
「そうだね……泣いてるかも」
「でも、いつもどおり……あぁ、違う。いつもは言えないから、特別優しく"おかえり"って、言ってくれるよ」
「……楽しみにしてる」
本当に、言ってくれそうな気がするから
そうなる気がするから
「ねぇ、雪乃」
「まだあるの?」
「これが最後だから」
「うん、なに?」
手がぎゅっと握られ、耳元に口が寄る
「本気で攻略して、OK?」