第5章 重要性プレイス

「お疲れさま、指揮官様」


皮肉めいた声量のこの声はなんだか久しぶりだ

そういやぁ最近、軽くしか言葉交わしてなかったな


彼女は持ってきたタオルで俺の髪をいつぞやのように拭く

「またびっしょり、ふふ。寺坂くんとの水遊びは楽しかった？」

「優雅に眺めてやがったくせに……」

「あはは……！でもこうやってタオル、持ってきてあげたでしょう？」


にっこりと微笑む姿がなんか懐かしくて、怒るに怒れない

……狙ってやってるんなら相当だよ…………


呆れつつ、息を吐く


つーか、またこいつは自分拭いてないし

髪から水が滴り落ちてる


「雪乃、交代」

「え？わっ」


タオルを頭から外して、彼女に被せる

そのままごしごしと拭ってやると気持ち良さそうに目を細めた


…………猫か


「おおー、羨ましいねぇ雪乃。頭拭いて貰っちゃって」

「中村ちゃん！またそーいうこと！」

「動くなよ。拭きにくい」

「うぃー…………なんという理不尽さ」


どこがだ

後ろに反転した彼女は渋々大人しくなった

……まぁ、反転されたのはなんとなく惜しいけど


「濡れると癖出るんだ？全体的に」

「うん、ウェーブがちょっと」

「へぇ……」


そこは母親からきたのか

長い髪を拭い終わり、少し手ぐしを通してから解放する


「良いよ」

「わぁ、ありがとう」

「雪乃ー！着替えいくよー！」

「うん！今いくよ！」


明るいな……テンション左右してる





「そろそろ……あれかな」





互いに、限界