第4章 真似っこミステリー
その後の体育はただただ"過酷"
その一文字で事足りた
いいや、普段の体育でも過酷な訓練はあったかもしれない
けれど、これは別の意味でのベクトルの差での過酷だ
こんな恐怖に支配された空間は……"地獄"でも良いかもしれない
「し、死んじまうよ……っ」
菅谷くんのその気持ちは皆同じだな
流石の私も、男子がへばるような体育をこなすというのは難しい
「うぅ……烏間せんせー…………」
「倉橋ちゃん……」
思わずしゃがみこんでしまう彼女を支えると、影が掛かる
「っ!」
「ひっ」
「烏間は俺らの家族じゃない」
くそ……回避する方法が浮かばない
倉橋ちゃんを抱き締めてぎゅっと目をつぶるが……衝撃は来ない
不思議に思って瞑ったばかりの目を開ければ、烏間先生が鷹岡先生を止めている姿
鷹岡先生はそんな烏間先生に私たちの中から誰か一人を選び、自分と戦わせろという
もし負けたならば、烏間先生が私たちへの報酬……つまり、"普通の中学生と同じ生活"を維持してもらえるように勤めるらしい
……そんなことはさせたくない
この人からの刃なら受け取って……その技術であの先生を仕留めて見せる
烏間先生はわたしたちを見渡し……
「………………」
渚と……私
二名の前に立った
少しだけ悩むようにすると……
「……やれるか、渚くん」
「え」
その刃を……渚に差し出した
……まさか渚にやらせるのか
先生……訓練のときの渚の動きで、感じたんだろうな
あの渚という人間は……
暗殺の才能を持っているということを