第2章 持続性スリープ
「あれ?どっか寄るの?」
家の方向は右、だけどそれの反対である左に行く私に彼は不思議そうに問いかけた
「何処に私が寄ろうと関係無いでしょうに…………大っ嫌いな人のこと知りたいなら別ですが」
「あんたも大っ嫌いな人に知られて良いなら教えてよ」
なんだこの"大っ嫌い"を強調しあった会話……まるで兄弟の下らない喧嘩みたいな会話
「教えないし、早く帰ってください。暗くなると危ないですよ」
「俺にそれ言っちゃうんだ?平気だよ、俺は今のところ停学になりそうなことはしないから」
停学になりそうなこと……ね。喧嘩かな
でも、停学を恐れるその理由はきっと…………きっと喧嘩がらみのような気がする
先生への憎悪、それにもイラっとした
「……ねぇ、私と先生…………どっちが……」
「先生」
「…………はや……」
「だって、雪乃も言ったじゃん。わかるって」
言ったけど……だからってなんで先生
不満げに見ると小馬鹿にしたように頭を撫でられる
「もしかして、好きだったの?」
「いいえ、嫌いでした。私と先生、どっちが嫌いって」
「残念だったね。俺は先生よりあんたを嫌いにはなれないよ……だって、雪乃は嘘はつかないでしょ?」
完全に、と言われたら少し否定するだろう。でもたぶんこの問いは自意識的に、意図的な意味での嘘は含まれてないと思う
普通に、相手を裏切りような嘘のことだと思う
頷くのが答えになる
「あんたへの嫌いはそういう嫌いじゃない……嫌悪感」
「なるほど、理解したので頭から手を離してもらえるかな」
「身長が低くてつい」
「殴る」
「止めるから」
なら足で蹴るかな、と、頭をよぎったがそれもまた自分へのダメージが多そうなので手を払い除けることにした
「さようなら」