第4章 真似っこミステリー
「E組vs各部活…………普通のトーナメントにいければA組と当たれたのになぁ」
オレンジジュースを口に含みながら不満を漏らす
A組とはなんとかして勝負をしてやりたいけど……今はテストくらいしか勝負できない
まぁ……テストで勝負しても、私には特に意味がないのだけれど
「そういやぁ、進藤が言ってたけど……」
「ん、なに」
「成績でE組に落ちた訳じゃないんだ?雪乃って」
あぁ、それか
これはまためんどくさい話だなぁ
「成績不振で落としたような”形”にはなってるけどね。書類上の話では」
「意図的に落ちた……なんてこと、あんたに限ってないよね」
「そうね。ただ、ちょっと面倒事……何でかなぁ、私ってタイミングが嘘みたいに良いんだよね」
強がって笑って見せたが、そのオレンジの目に威圧されて強がりを取り止めた
瞼を伏せ、自嘲気味に続ける
「…………ただの濡れ衣だよ。クラスの子がやったことなのに、たまたま私が近くにいたから……みたいな」
先生は本当に悪いやつをわかってない
ただその場の判断と自分のキャリア
たまたま私が近くにいて
たまたまその言いつけた犯人が先生のクラスの子で
たまたまそれが先生のキャリアに大きく傷のつくようなことだった
「……ただそれだけ…………責任転嫁なんて、やったところで無意味なだけなのに」
「停学中にそんなことがね……」
「でも、E組に来れたことを後悔なんてしてないよ。私は……きっとあそこじゃ生きられない。退屈で死んでしまいそうです」
「なら結果オーライか。良いねぇ、謳歌してらっしゃる。ミルフィーユ奢ってやるよ」
「本当、やっぱり持つべきものはカルマだね」
「ただし、俺の頼み事聞いてくれたらね」
頼み事?
なんの頼み事だ?
首をかしげると、声色は変えずに告げられる
「すげえ簡単なこと、言わなくても平気だと思うけど……寝てね。体調管理がぞんざいだから」
「あら、私の心配をしてくれるなんてどうしちゃったの。……平気だよ、寝るのが億劫になってないから」
感謝を仇で返したりなんてしない
救われた睡眠はしっかり受けとるよ