第14章 得意なこと

「辛かったでしょうね。

私にはあなたの気持ちは分かりませんが、辛いということだけは分かります。

私には家族が居ないので決められた道、については理解しかねます。

どんな形であれ、愛してくれる人が居るというのは良いことですよ」


自分というものを否定されながら育ち、自分を犠牲にすることしか知らなかった。


そんな私には家族から愛されている人のことは分からない。


「でもキルアさんは私とは違います。

期待されていても決して甘やかされて来た訳ではないでしょう？

きちんと正面から向き合ってくれているでしょう？」


「…あぁ」


「世界はまだまだ広いです。

あなたの知らないことが山程あります。

それらを経験してみるのも良いと思いますよ」


出会い、別れ、学び、挫折。


実に様々なことが経験出来る。


「そうだな。

やっぱり俺決めたよ、家出する。

ずっと考えてたんだけど、これで心が決まったわ。

今すぐじゃなくてちょっと時間経ってからになるけど、兄貴達の居ない時を見計らって屋敷を出る」