【HUNTER×HUNTER】漆黒人形〜ドールな薬師〜
第14章 得意なこと
「ありがとうございます。
はい、どうぞ」
「あ、サンキュ…。
なぁ、なんでここまでしてくれんの?」
お礼の言葉はなんだかぎこちなく、言い慣れていないと感じた。
「昔の私に似ているから、ですかね」
今の彼を見ていると、まるで昔の自分を見ているかのような錯覚に陥る。
「似てる?俺が?
俺人殺しだよ?
あんた全然そんな風に見えないけど」
「私も人殺しですよ。
人の期待に応えられない出来損ないのね」
「期待とか…んなん要るかよ」
私とは逆の環境のようですね。
「人に決められたレールの上をただ歩いてくのなんて、どこが良いんだよ!
俺は俺で…他の誰でもないっ。
自分のことぐらい自分で決める。
俺はあいつらの操り人形じゃねぇっつの!」
はぁはぁ、と肩で呼吸をしている。
「日頃の鬱憤をここで発散ですか」
「あ…悪い」
「確かに自分は自分だけのものです。
あなたは操り人形なんかではなく、ちゃんと心があります。
心があるから苦しいと涙が溢れるんです」
彼の頬を伝う一筋の水滴を指先で拭う。