第2章 風邪っぴきさん
「瑠璃でーす。開けるよ〜?」
「あ!瑠璃!!いらっしゃーい!!」
「おそ松兄さんうるさいよ!!十四松起きちゃうだろ!?」
6つ子がいるだろう襖に呼び掛けると、おそ松登った大きな声とそれを諌めるチョロ松の声が聞こえてきた。
「お邪魔しまーす……って、寝込んでますね」
襖を開けると、長い布団の上に5人が寝込んでいた。
「あー、瑠璃がマスクしてる〜」
「当たり前だろ!?ていうか!何勝手に呼んでんだよクソ長男とクソ末弟!!」
今度はトド松とチョロ松の言い合い。みんなダウンしてるというのにこの賑やかさ。チラッと寝てる十四松を見てみるけど、一切起きる気配は無い。
一松の方を見てみると、息が上がっていて辛そうだ。
「リンゴ剥いてきたんだけどさ、食べられそう?」
「え!?まじで!?食う食う!!」
「フッ…俺のために手を煩わせてしまって………すまない」
「なんで溜めたの!?」
「お腹空いてたんだよね〜!さっすが瑠璃!!」
おそ松カラ松トド松は元気そうで何よりだ。3人に、剥いたリンゴを渡した。
「はい、チョロ松にも」
「え!?僕にも!?」
「お疲れ様ってことで」
「ありがとう…!」
そんなに喜ばなくても、と思うほどチョロ松は喜んでくれた。そして、一松と十四松用の摩り下ろしたリンゴは…と。
「十四松は寝てるからまた後で摩り下ろしてあげようかな…一松、食べられそう?」
一松に声を掛けてみたが、やはり声は出せないのか、ふるふると頭を横に振るだけ。頭を振ったせいで氷囊が額から落ちてしまった。手に取ってみると、氷囊の中の氷は溶けてしまっていた。
「んー、無理に食べさせてもなぁ…摩り下ろしてあるけどやっぱり無理そう?」
いつからご飯を口にしてないのかわからないけど、多分結構前から食べてない気がする。少しでも食べてほしい。
「……た………べ、る」
一松が私の方をいつもよりさらに細くなった目で見て何か呟いた。
「うん?摩ったやつなら食べれそう?」
「ん…」
一松が小さく頷いてくれたので、食べられそうで安心した。他のみんなも、シャクシャクとリンゴを齧る音が聞こえてくるので食べてくれているらしい。
「一松、横向ける?」
「……」
声を掛けると、ゆっくりと仰向けにしていた顔を横にしてくれた。