第2章 風邪っぴきさん
「……あれ、返事がない」
いつもなら、6つ子の誰かか、松代さんが反応してくれたり、ドアを開けてくれるのだが、今日は一切反応がない。
呼び出したくせに出ないなんて…。
「おそ松〜!来たんだけど〜!」
先程よりも大きな声を出すと、やっと家の中からドタドタと足音が聞こえてきた。
「瑠璃?なんで!?」
ガラッとドアを開けたのは、三男のチョロ松だった。驚いた顔をして、なんで居るのかと聞かれたが呼んだのはあなた達であって。
「いや、おそ松とトド松からLINEで呼び出されたから来たんだけど…」
「はぁ!?あいつら何やってんの!?」
「え…どうしたの…?来ちゃダメだったの?」
「いや、来ちゃダメってことはないんだけど…」
チョロ松は元からへの字な口を、さらにへの字にして、さらに眉毛を八の字にして喋りだした。
「来てくれたのは嬉しいんだけどさ…実は…僕以外、風邪引いて寝込んでるんだよ…」
「………は?」
「ほんっと…何やってんだよあいつら…ごめんね、呼び出しちゃって…」
たしかに、チョロ松の手元を見てみると、氷水が貼ってあるたらいを手にしていた。
「…松代さんは?」
「母さんと父さんが旅行中にあいつら風邪引いちゃってさ…ほんっとあいつら風邪引くタイミング悪いよな…。あ、瑠璃に風邪うつしちゃ悪いし、帰ってくれていいからね?迷惑かけちゃって本当ごめん…!後で、あいつらぶちのめしとくから!!」
「いや…松代さん達いないってことは、チョロ松が一人で看病してんの?」
「え?あぁ、うん…。まぁ放っておいても治るとは思うけど、一応看病してるって感じ」
「え、手伝うよ!一人で5人を看病って大変でしょ?あと、お水も買ってきたし!」
おそ松たちが水を買って来いって言った意味がわかった。あれはあれで、SOSを出していたらしい。6本の水と言ったのは、不審に思われないためだろう。
チョロ松が5人を看病するなんて、無謀…というか、いろいろと不安な面がある。一応少しは常識を知っているとは言え、6つ子の一人。何をしでかすかわからない。
「え、いいの!?た、助かる…。実際、一人でどうしようかと思ってたんだよね…。あ、マスクあるから着けて!今のところ、おそ松とトド松は元気なんだけど、一松が結構重症っぽくて、十四松はずっと寝てて…あ、カラ松も元気な方」