第3章 弱い俺
「おまたせ〜」
布団の上に座ってボーッとしていたら、お粥らしきものを持った瑠璃が襖を開けて入ってきた。
「寝てればよかったのに。しんどくない?」
「…ずっと寝てたから」
「まぁ、ずっと寝てても逆にしんどくなるよね」
そう言いながら瑠璃は、皿とスプーンを渡してきた。皿の中を見ると、湯気が出てそそる匂いのしたお粥が盛ってあった。
「ちゃんと味見したんだけど…薄かったりしたら言ってね、塩とか持ってくるし」
と、心配そうに瑠璃は言っているが、チョロ松兄さんが作ったものと比べると全然美味しいと思う。いい匂いもするし、元から腹は減っていたが匂いを嗅ぐとさらに腹が減ってきた。
「…いただきます」
「召し上がれ〜」
受け取ったスプーンでお粥を掬って口元に運ぶと、湯気の量のわりには熱すぎず、お粥の出汁や卵が体に染み渡っていった。
「美味しい…」
「本当?よかったー!お粥なんてそうそう作らないからさ、不安だったんだよね」
簡単そうに見えて味付けとか難しいし!と言っているが十分…というか、かなり美味しい。
ぱくぱくと食べていたら、瑠璃が嬉しそうに覗き込んできた。
「…なに」
「いや、作ってよかったなって思って」
「…俺にだけ作ってくれたの?」
「そう!他のみんなは家から持ってきたハンバーグとかで済ませてもらってる」
「…ハンバーグ」
「ちゃんと一松の分も取ってあるから明日にでも食べて!」
成人してるくせに、未だにハンバーグという響きにそそられてしまって恥ずかしかったが、どうせ他の兄弟も俺と同じような反応をしたと思うから、そんなに呆れられていないだろう。多分。
「瑠璃〜!お母さんから電話だよ!!」
下の階からトド松の声が聞こえてきた。
「あ!そういやスマホマナーモードしてた…!ごめん!!すぐ行くね!!…一松、食べ終わったら食器そこら辺に置いてていいからね!」
と言って、瑠璃は慌ただしく一階へと降りて行った。
一人残された俺は、お粥を少しずつ口の中に入れて食べ進めた。