第3章 弱い俺
「あー!?なにそれ!?あーんってやつ!?は!?一松ズルくねぇ!?なんなのそれ!?はぁ!?俺にもやってよ!!」
口を開けたら、おそ松兄さんがまた騒ぎ始めた。俺が食べさせてもらうことへの反論。俺だって好きで食べさせてもらうのではない。むしろ恥ずかしいぐらいなのに。
「…一松、起き上がれないぐらいしんどそうでしょ?仕方ないじゃん…。少しでも食べて元気つけてもらわなきゃいけないんだから…」
「俺たち6つ子ですけど!?平等に接してほしいんですけど!?」
瑠璃がああ言えば、おそ松兄さんがこう言う。
口を開けて待っているのがとんでもなく恥ずかしかったので、閉じようとしたら瑠璃が摩り下ろしたリンゴを口の中へ滑り込ませてきた。
甘い。
リンゴの甘さが口中に染み渡り、すんなりと喉へ通って行った。
「ずっるーい!!僕も僕も!!」
「俺にも!!」
「トッティとおそ松はチョロ松にやってもらって」
「はぁ!?僕!?」
口の中に残っているリンゴの甘みを反芻させながら、他の奴らの会話を聞いていたら、瑠璃が俺の方を見ていた。
「一松、もう少しだけあるけど頑張れる?」
「ん…」
瑠璃は心配そうに聞いてきてくれたが、リンゴなら全然食べられそうだったので頷いて、自分から口を開けた。すると、また口の中にリンゴを滑り込ませてくれた。
あれから、トッティやクソ松が瑠璃に喋りかけるせいで、リンゴを食べ終えるまでに時間がかかってしまったが、全てを食べ終えることができた。
それからは十四松が復活したりと、さらに騒がしくなっていたが、一応腹が空いていたのかリンゴを食べさせてもらうと睡魔が襲ってきた。
寝た方が早く治るだろうし、起きていても騒がしいだけなので俺はもう一度寝ることにした。