第3章 弱い俺
今回の熱は、かなり久しぶりだった。高校生の頃はしょっちゅう熱が出ていたから、慣れというものもあってそんなに苦しくなかったと記憶しているが、実際に久しぶりに熱が出ると、かなりしんどい。体さえも動かしたくない。こんなにしんどいのに、よくあの頃しょっちゅう熱を出してたな、と逆にあの頃の自分に尊敬する。
唯一生き残っていたチョロ松兄さんにお粥を貰ったが、元気だったとしても食べたくない程のお粥だったので遠慮させてもらい、せめて風邪薬だけでも飲んで、とチョロ松兄さんに言われたので薬だけ飲んだ。
薬を飲んだから寝たら少しは楽になるかなと思い、目を瞑ると、おそ松兄さんとトド松が騒ぎ始めた。
「なぁ!瑠璃呼ぼうぜ!!たしかあいつ、今日はバイト休みだったし!!」
「いいね〜!!てか、何で休みって知ってんの?」
「この前、今度一緒に遊ぼうぜ〜ってなって、シフト聞いてたんだよ。なーなーになってたから遊ぶ約束立ててなかったんだけどな」
「へ〜!じゃあ呼んでみる!?瑠璃に用事なかったら来てもらおうよ!!」
とか、2人で騒がしく喋っていた。
風邪菌まみれのこの家に瑠璃を呼ぼうとするなんてどうかしている。熱が出てぼんやりしている俺の頭でもわかる。だが、俺はしんどくて声も出せない。さらに、生憎ここには自称常識人のチョロ松兄さんはいない。十四松は多分寝ている。たぶんクソ松も。
馬鹿2人を止める奴がいなかった。
何やってるんだあの2人は…というか、こんな姿を瑠璃に見せたくないんだけど…と思っていたら、トド松のスマホを使って、おそ松兄さんが多分瑠璃に連絡をし始めた。
「なんだよ〜、既読つかねぇじゃん」
「んー、用事あったのかな〜」
「スタンプ連打してやろーっと」
「うわぁ、それうざいやつ」
とか、2人で言い合っていたが、先程よりも静かになっていて、俺の瞼はここぞとばかりに勝手に閉じていった。