第2章 風邪っぴきさん
「たしかに、一松は家以外だとツンケンしてたっていうか…あんまり感情とか出してなかったからね」
チョロ松が息を荒くして眠っている一松を、お兄さんのような優しい顔をして見つめた。
そんなチョロ松を見ると、やっぱりちゃんとお兄ちゃんやってるんだなぁ、と思った。
この6つ子は、みんな同い年だから、とか、俺がみんなでみんなが俺、とか言ってるけど、やっぱり兄として弟のことを心配している。
「そうなんだ…。十四松が一番昔と変わったかな〜と思ってたけど、一松も十分変わったよね」
「昔からあんまり感情を出す奴じゃなかったけど、大人になってから更に感情を抑え込むようになったというか、我慢するようになったかも。まぁ、感情出すときは出しまくるから困るけどね」
あはは、と困ったようにチョロ松は笑っているが、何処か安心しているように見えた。
たしかに、一松は無表情なことが多いけど、感情を出しまくるときがたまにある。私はそんな場面にお目にかかることがあまりないので、私にとっては本当にレア。
「高校の頃の一松知ってる?」
「え?知ってるっていうか…同じ高校だったけど?」
チョロ松が高校の頃について聞いてきたが、私は6つ子と同じ中学、高校に通ったつもりだったし、同じクラスにもなったことあるのだが、もしかしてチョロ松には気づかれてなかったのかも、とそんなはずがあるわけかないのに不安になった。
「あ、そういう意味じゃなくて!…一松、休みがちのときあっただろ?」
「え、あー…休んでた頃あったね。え、グレてたからとかじゃないの?」
たしか、高校2年の頃に一松は学校に来ることが少ない時期があった。でも、その頃の一松はグレ初めていたし、どうせ学校が面倒臭いだけだろうと思っていた。
「それもあるんだけど…。高2の頃のクラスが一松に合ってなかったらしくってさ。それまででも自分の思ってることとか上手いように表現出来なかったのに、さらにそのせいで我慢しちゃうようになっちゃってさ。それで、熱とか体に出るようになっちゃんだよね。…そういう訳で学校休んでたってわけ」